カウントダウンも始まって、ますます「さよならムード」が盛り上がってきた五月の歌舞伎座です。

昼の部は「荒事」「舞踊三題」「世話物」とデパートのレストランのような（？？）感じで、それはそれで楽しみではあります。

「暫」
昨年の金丸座で観た海老蔵さんの鎌倉権五郎は、息遣いが聞こえるくらい近かったのですが、今日の歌舞伎座ではさすがにそこまでは。「歌舞伎座の暫」で、ひとつ発見がしたことがあります。それは、鎌倉権五郎がとても大きく見えること。圧倒的に大きかったです。これが歌舞伎座のスケールなんでしょう。舞台にあがって後見4人にサポートしてもらって見せる「元禄見得」はまさに荒事の様式美そのものです。
「知る楽」でも取りあげられていたとおり、初代は「稚気あふれる新進スター」、そして「暫」の基本形を作りあげた二代目は48歳にして角前髪の若者を演じたというこのお芝居。私が歌舞伎を観続ける限り、ずーっと海老蔵さんの鎌倉権五郎と付き合うことになると思いますが、それはそれでまた楽しみなのです。

「寿猩々・手習子」
人間国宝二人が登場する舞踊二題です。両方ともこれまで何度も観た演目ですが、それぞれ新たに気づいたことが。
「寿猩々」は囃子方というか音楽がすばらしいかった。あの「乱れ」と言うんでしょうか？すごいテンポで圧倒されました。
「手習子」は昨年9月に三越劇場で孝太郎さんが演じた舞台を観て、特別な印象を持たずにいましたが、今日、中村芝翫さんが80歳で13−4歳の少女を演じているのを観て、道成寺のスピンオフ（って言うのかな？）版であることもよーくわかったし、80歳の方がより少女らしく見えるということもよくわかったし・・・不思議な演目だなぁと思いました。

「加賀鳶」
五代目菊五郎丈が河竹黙阿弥に依頼して作り上げられた作品だそうで、音羽屋ゆかりの演目とのこと。知らなかったのですが、菊五郎さんは道玄初役だそうです。なんとも意外です。ただ、幸四郎さんの道玄よりもニンなのでは？と直観的に思いました。秀太郎さんのお兼があまりに印象的だったので、今日の時蔵さんには「少し汚れた艶っぽさ」が今一つ感じられなかったのですが、それこそ時蔵さんのニンではないと思うので、気にするのはやめました。
ちょっと居心地が悪いのは道玄を「愛嬌のある小悪人」と評していることで、今の時代に照らしてみると、とんでもない「DV親父」なんですよね。何となく日本におけるDVの水脈を観た気がして、複雑な心境です。まあ、歌舞伎観劇にあたって、今の社会と照らし合わせて語ること自体、あまり意味あることではないのかもしれませんが・・・。

「戻駕色相肩」
大好きな松緑さんと菊之助さんの舞踊で、適度にコンパクトでいいですね。ただ、禿を演じた右近さんが年齢も体格も規格外という感じで、アンサンブルとしての間延び感は否めず。もしもあの役を別の人が演じるとしたら、今、誰ができるのだろう・・・。