本と散歩と・・・📚

本と映画と散歩と旅と・・・いろんな出会いを綴ります。

本が好き、考えることが好き、散歩が好き・・・静かに新しい時代を生きています♫

書籍 - 藤本 和子 著「砂漠の教室: イスラエル通信」(2023_bk_#094)




自らに「問い」を重ねる真摯さ

 翻訳家・エッセイストとして知られる藤本和子さん(1939年生まれ)の著書2冊『ブルースだってただの唄』、『イリノイ遠景近景』が、我が家の書棚に積読状態で控えています。「読もう」と思いながらも、ただ存在しているだけで安心して早くも1年。なのに、先日、書店の河出文庫最新刊コーナーで見つけてしまった本書に、迷いなく手が伸びていました。

 理由は、現在、私の中で、イスラエルに行ってみたい欲求が高まっているから。コロナ明けで、海外に飛び出したい気持ちがどんどん広がっており、そんな私の眼は、本書のサブタイトル「イスラエル通信」の文字を瞬間的にキャッチしてしまったのです。

 奥付付近には、本書が今から45年前、1978年に刊行された単行本の文庫版であることが記されています。平松洋子さんの解説を読むと、著者の初エッセイ集だとありました。そうだったのか。

 今から45年前に、ユダヤ人である夫とともにヘブライ語を学ぶためにイスラエルの語学学校に入学し、そこで過ごした8ヶ月。初めての生活、食事、文化、歴史、砂漠地の気候風土。それらとともに広がる思考と感情と身体知が、真摯なことばで綴られている、凄い紀行文でした。

 「イスラエル・スケッチI & II」の章を読みながら、関口涼子さんの「ベイルート961時間」を思い出し、「ヨセフの娘たち」で語られる著者自身の不妊治療、2度の子宮内膜症手術、中絶手術の詳細な記述に「女性」としての運命のようなものを感じ、"イスラエルについて語ることは重たい" から始まる「なぜヘブライ語だったのか」と「おぼえ書きのようなもの」は、森崎和江さんの著作を引用して、著者が自らに、何度も「問い」そのものを迫る真摯さ、信念のようなものが滲み出ています。

 著者の思考の拡がりに乗って、私もつい思考を拡げてみると、もしも、今から20年前に藤本和子さんの著作と出会っていたら、今とはまた少し違った生き方をしていたかも知れないと思ったりもします。ましてや、学生時代であれば、さらに大きな影響を受けていた気がします。

 読み進めながら、イスラエルの歴史に対する浅薄な情報しか持ち得ておらず、そんな状態で「コロナも明けたし、行けるものなら・・・」と、少々はしゃいでいた自分の不明を恥じました。同時に、書棚で控えている2冊の著作、森崎和江さんの著作、そしてイスラエルの歴史に関する本を今一度読む・・・そんな「知の旅」に出てみたいと思うようになった自分がいます。
 
<目次>
砂漠の教室
イスラエル・スケッチ I
ヨセフの娘たち
イスラエル・スケッチ II
なぜヘブライ語だったのか
おぼえ書きのようなもの

解説 思考と身体を外に開く

ART・・・「特別展 明治美術狂想曲」 @静嘉堂文庫美術館 (2023_ar_#004)



カオスな時代の「美術」

 丸の内の静嘉堂文庫美術館で開催されていた「特別展 明治美術狂想曲」、最終日に鑑賞できました。気になっていたんです、この展覧会。

IMG_7947 江戸から明治に大転換した混乱期、「美術」はいかに生まれ、「工芸」はどう変化して行ったのか。「狂想曲」というタイトルにふさわしい、カオスのような状況が偲ばれます。

 柴田是真作の超絶工芸品を始めとして、当時の日本各地で長い歴史を持つ陶芸品がジャポニズム・ムーブメントに乗って外貨獲得の手段になったこと、当時の人たちのマーケット感覚で「欧米好み」の意匠に作風がぐっとシフトしたこと、その後、日本古来の仏像や仏教画などの再評価により価値が高まったこと・・・確かに明治時代の美術・工芸の混乱が伺えます。

IMG_7944 本展覧会で最も気になったのは、黒田清輝の描いた裸婦像の腰部に布を巻き、展示会で一般展示した「腰巻事件」。黒田清輝いわく「最も困難で最も巧拙の分かるる所(中略)へ幕を張られた」一件です。展覧会ののちは、ビリヤード室など男性だけが楽しむ部屋に飾られていたとのこと。

 今の価値観でいえば、なぜ上流階層における観賞用絵画として価値があるのは「裸婦」であって「裸男」「裸漢」ではないのか。最も困難、最も巧拙が分かれるのは、裸婦の下半身よりも、むしろ男性の裸体の方ではないだろうかと思いますが、違うのかなぁ・・・。

 そんなこんなに思いを巡らせながら、音声ガイドを首から下げて鑑賞すること1時間。個人的には明治29年に制作された「葵紋蒔絵糸巻太刀拵」の美しさに魅了されました。
 
 鑑賞後、いつものミュージアム・ショップに立ち寄って購入したのは、図録と工房がご近所の梨園染「曜変天目茶碗」手ぬぐい。

 狂想曲のリズムに乗って、ステップ踏みたくなるような楽しい展覧会でした。

<特別展 構成>
ごあいさつ
第一章 「美術」誕生の時 ー 江戸と明治のあわいー
第二章 明治工芸の魅力 ー 欧米好みか、考古利今かー
    コラム1「観古美術会と伝統美術の再評価」
第三章 博覧会と帝室技芸員
    コラム2「第四回内国勧業博覧会の美術展示」
    コラム3「帝室技芸員」
第四章 裸体画論争と高輪邸の室内装飾
    コラム4「裸体論論争と黒田清輝」

    

書籍 - やまだ紫 著「しんきらり」(2023_bk_#093)

しんきらり (光文社文庫 や 37-1)
やまだ紫
光文社
2023-04-12



誰のものでもない、自分の歩幅

「石井千湖の沈思読考 #16」で取り上げられた1冊で、いつも回遊している書店で指名買いしました。

 著者のやまだ紫さんは1948年 東京生まれ。2009年逝去 (享年 60)。2006年からは京都精華大学で教鞭もとり、マンガ家、エッセイストとしても活躍していらしたそう。

 本作の初出は1981年から1984年にわたって月刊「ガロ」での連載です。
 主人公は、専業主婦 山川ちはる。夫と二人の娘との何気ない日々が綴られます。

 子どもたちのちょっとした変化に「ううっ」と感動を覚え、会社員夫の無自覚さにイライラを募らせ、パートタイムを真面目にこなし・・・その中で自分自身を見つめ、新たな自分を発見する物語。

 結婚式参加のため、久々に一人で外出したときに感じる、自分の本当の歩幅。夫のバンコクへの研修旅行という名の買春旅行に対する怒り。そつなくこなすパートの残り時間が少なくなってきたことの予感。自分を奪い合う二人の娘への愛おしさ。ちはるはこれらを、解像度の高い自分のことばできちんと表出させます。

「しんきらりと鬼は見たりし菜の花の 間(あわい)に蒼きにんげんの耳」(河野裕子)

 日々の生活とその一瞬一瞬の感情が切り取られ、装飾のない画風で描かれています。40年前の作品ではありながらも、20代後半から30代後半の10年間の専業主婦が抱く素直な感情や怒り、自分を鼓舞する姿に、最後は何だか励まされました。いつの時代にも愛されて読み継がれ、すべての「自分を生きたい」人に届けたいマンガ・・・届きました、確かに。
 
<目次>
菜の花 / 河野裕子
淋しいシンデレラ
ひとり歩き
抱きしめる
バナナの出てきた日 他

解説 トミヤマユキコ

Movie - 「怪物」@TOHOシネマズ日本橋 (2023_mv_#018)



光の中を疾走する少年たち

 是枝監督の最新作「怪物」を見てきました。脚本の坂元裕二さんがカンヌ映画祭の脚本賞を受賞し、坂本龍一さんが音楽を担当した話題作です。

 舞台は静かな湖(諏訪湖)を抱える地方都市。夫を交通事故で亡くした麦野早織(安藤サクラさん)は、地元のクリーニング店で働きながら小学校5年生の息子 湊(黒川想矢さん)を一人で育てています。

 最近、湊の様子がおかしい。ケガをしたり靴が片方なかったり。どうもイジメを受けているようで、その問題を解決したいと願う早織は、学校で校長(田中裕子さん)をはじめとする教師たちに問題の真相究明を迫ります。しかし、ことは容易に進みません。特に、早織が最も問題だと思う担任 保利(永山瑛太さん)はなんとも捉えようのない教師で、湊が同じクラスの星川くん(柊木陽太さん)をイジメているといい放つ始末。

 シングルマザーの早織、生徒思いの保利、湊と星川くん少年たち、それぞれ見えているものが違う。さらに校長先生、教師たち、児童やその父兄たち、みんな見えているもの、見たいと欲しているものが違う。

 星川くんの父親(中村獅童さん)が言います。「バケモノですよ」
 バケモノとは誰のことなのか、バケモノとは何なのか。

 ・・・暴風豪雨の朝、少年たちが姿を消してしまいます。

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 未来を象徴するような生命感溢れるラストシーンが美しくて、何だか目頭が熱くなりました。エンドロールにある坂本龍一さん追悼にも心動かされ、バッグの中のハンカチを取り出して目頭を抑える指に、少しだけ力が入ります。

 奇しくもこの日は、日本全国を覆う台風の影響で、至る所で大雨警報が発信されていました。映画館を後にしながら「激しい雨が、気持ちを浄化してくれるといいな・・・」と思いながら帰路につきました。

 同日夜、TBSラジオに是枝監督が出演してカンヌ映画祭や作品の背景、撮影時のお話を語っていました。構想は2018年とのことで、そこから坂元裕二さんたちと脚本を作り上げてきたそうです。

 本作、カンヌ映画祭ではクィア・パルム賞も受賞しています。


書籍 - 松田 青子 著 「持続可能な魂の利用」(2023_bk_#092)

持続可能な魂の利用 (中公文庫 ま 51-3)
松田 青子
中央公論新社
2023-05-25



絶望に喝采を!

 大好きな作家、松田青子さんの文庫最新作。

 30代の主人公 敬子は、非正規で勤める会社で嫌がらせを受け、心身ヘトヘトになって擦り切れそうな魂とともに、妹の住むカナダに旅行します。カナダの生活で、疲弊した魂と身体は少しずつチャージされて行きますが、日本に戻るとまたこの息苦しい環境に押しつぶされそうになりました。実は、この息苦しい環境は、「おじさん」たちが日本をたたむための意図的な計画のもと、周到に作り上げられたものだったのです。

 そんな敬子の魂を持続させているのは、押しアイドルXXの存在です。XXは笑いません。そんなXXに恋してエネルギーをもらい、非正規就業先で知り合った香川歩とともに、XXや子育て中のママたちと連帯し、「おじさん」たちが計画した日本の縮退計画をぶっとばして行きます。

 魂は疲れるし、魂は減る
 だから、わたしたち、つながって、やってやりましょう 

 本作を読んで、パッと思い至ったのが先日見た映画「波紋」でした。二つの作品に通底しているのは、日々、組織、家庭、社会を覆う「絶望」とその絶望を粉砕する女性同士の連帯です。

 本書で描かれる、わかりやすい「おじさん」像。少し長いですが、引用します。

「おじさん」が気づいているよりもずっと、「おじさん」はわかられていた。

一つ、「おじさん」に見た目は関係ない。だが、見た目で判別がつくことは確かに多い。特に、目つき。特に、口元。座り方もだらしない。

一つ、「おじさん」は話しはじめたらすぐにわかる。

一つ、 どれだけ本人が「おじさん」であることを隠そうとしても無駄な努力である。けれど、「おじさん」であることを隠そうとする「おじさん」は実はそんなにいない。「おじさん」はなぜか自分に自信を持っている。

一つ、「おじさん」に年齢は関係ない。いくら若くたって、もう内側に「おじさん」を搭載している場合もある。上の世代の「おじさん」が順当に死に絶えれば、「おじさん」が絶滅するというわけにはいかない。絶望的な事実。

一つ、「おじさん」の中には、女性もいる。この社会は、女性にも「おじさん」になるよう推奨している。「おじさん」並みの働きをする女性は、「おじさん」から褒め称えられ、評価される。(pp.109-110 )

 「おじさん」が気になったら、「波紋」と本作をセットで体験することをお勧めします。特に、私の世代で「おじさん」になるよう推奨され、従順に、無自覚にその働きかけに乗ってきたのでは?と思い当たる人たちこそ。かくいう私もその一人の自覚があるのです・・・。

 つながって、つながって、つながって行きましょう。

参考;松田青子さん作品の感想文はこちらです。
- おばちゃんたちのいるところ(中公文庫)
- 女が死ぬ(中公文庫)

<目次>
第一部
第二部

解説 次のはじまりのために、魂を持続する 松尾亜紀子

書籍 - ポール・ギャリコ 著 / 亀山龍樹 訳「ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く」(2023_bk_#091)




ハリスおばさん、最強の61歳

 映画小説ですっかりファンになったミセス・ハリス。
 夢を失わない彼女の生き方が、奇跡を起こす物語第2弾はNYが舞台です。

 パリでの奇跡から1年ののち、いつものように、ハリスおばさんと親友のバタフィールドおばさんは家政婦として静かな日々を送っています。この二人は仕事終わりにお茶しながらおしゃべりに花を咲かせるのが大の楽しみ。そんな二人の幸せな時間を壊すのが、お隣から聞こえるヘンリー少年を虐待する里親の声でした。

 ハリスおばさんは、ヘンリー少年の実の父親がいるアメリカへ連れていきたいと願いますが、何せ薄給の身にそんな余裕はありません。どうにかならないものかと思案するなか、第一の奇跡が起きます。それはハリスおばさんの大のお得意さまシュライバー氏が昇進して映画・テレビ会社の社長となりNYに5年の契約での赴任が決まったこと。それに伴いシュライバー夫人のヘンリエッタさんから、ハリスおばさんのプロフェッショナルスキルを見込んで、NYでの生活が落ち着くまで帯同して欲しいと依頼されるのです。

 そこでハリスおばさんは一計を案じ、バタフィールドおばさん、ヘンリーとともにNYへ渡ります。ヘンリーはこっそりと。そう密航計画です。

 ここからの展開は、ワクワク、ドキドキの連続でした。
 とはいっても、世の中、それほど甘くはない!一行は、何度も窮地に立たされますが、その都度、ハリスおばさんの知恵と勇気を神様はきちんと見てくれているようで、再会した仲間たち、この企みで出会ったいろいろな仲間たちを巻き込んで、支えられて、窮状をはねのけていくのでした。

 人を見る目の確かさ、人を信じる勇気、自ら考え行動するチカラ、知力気力体力がスーパーなハリスおばさんは、最強の61歳です。何ともカッコいい。憧れちゃいますよね。

 1950年代後半とおぼしき時代背景ー何せロンドンからNYへは客船での旅です!ーなど、今の私から見ると、思わずため息が出てしまう贅沢な時間。NYの明るさと勢いに圧倒されながらも、ロンドンのちょっと薄暗いしっとりとした木々の中での生活を懐かしむハリスおばさんとバタフィールドおばさん。そんな二人の滋味溢れる感性がこれまたいいんです。誠実な人生を歩んできた人たち、地に足がついた生き方をしている人たち・・・そんな感じがして。

 パリ、NYときて次はどうも「国会」に潜入するらしい(笑)。ハリスおばさんの冒険をウオッチし続けます。


<目次>
ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く

解説 矢崎 存美

書籍 - 稲垣えみ子 著 「家事か地獄か 最期まですっくと生き抜く唯一の選択」(2023_bk_#090)




グッドタイミング!

 自宅の大規模改修工事計画がそろそろ具体的になってきました。総会での採決までカウントダウンです。「大規模改修工事開始」という天命(?)を受け入れて、それを私の断捨離マイルストーンにすることにしました。

 そんなこんなで、開始日から逆算して日々少しずつ整理を始めていたところ、書店で本書が目にとまり迷わず購入。私の喫緊のテーマとピタッと符合して、ウンウンと頷きながら一気読みでした。

 著者の稲垣えみ子さんの著作は、このブログでも何作か取り上げており、今回のテーマは「人生100年時代のまさかの出口戦略」。家事をやり続けられることが老後を救う!という力強いメッセージにあふれた一冊です。

 今の私の状況を鑑みるに、6章あたりからは首が痛くなるくらいの頷きようで、今は「怒涛のイメージ作り」段階にあります。著者がオススメしているこんまりさんの「片付け本」を再読することに決めました。

 同世代女性として「自分の面倒を自分でみる」という姿勢に、勇気づけられ、大規模改修工事が始まる日を目指して、日々、片付けに邁進してまいります。
 
<目次>
はじめに 家事なんてなくなればいい?

1 私が手にした極ラク家事生活
2 あなたの家事がラクにならない本当の理由
3 家事こそは最大の投資である理由
4 老後と家事の深い関係
5 老後を救う「ラク家事」
6 モノの整理が天王山
7 実録・人はどこまでモノを減らせるか その1 怒涛のイメージ作り編
8 実録・人はどこまでモノを減らせるか その2 怒涛の実践編
9 死ぬまで家事

おわりに 総理、家事してますか?(ラク家事えみ子、政治経済を語る)

書籍 - 朝井リョウ 著 「正欲」(2023_bk_#089)

正欲(新潮文庫)
朝井リョウ
新潮社
2023-05-29



「多様性」というコトバを飲み込んで

 話題の小説が、文庫になって登場しました。単行本を読もう読もうと思いながらも、手を伸ばすきっかけを失していた2年間。その間、多くの人から「読みましたか?」と尋ねられ、何人かの知人がネットで読後感を発していた小説です。

 週末、いつもの書店を回遊していた際に、文庫化された本書を見つけて「今しかない」と内なる声に押されて購入。一気に読みました。

 "多様性"・・・過去10年間、何度口にした言葉だろう。私自身も、目に見える、想像できる限りでの"多様性"の意義を声高に叫んでいた一人のように思います。主要な登場人物である夏月や佳道から見れば、それは近寄りたくもない、醜悪なものですらあります。

 「明日死なないため」
 「この世界で生きていくために、手を組む」
 「いなくならないから」

 夏月と佳道のふたりのことばが読み終えた後も頭の中で蘇り、目を瞑ると最後の夏月の凛とした姿勢が目に浮かびます。

 先日見た映画「波紋」同様、"水"が大きな意味をなす物語でした。

 稲垣吾郎さん、新垣結衣さんで映画化されるそうです。私の想像した登場人物にあまりにぴったりで、二人の姿が映るカバー写真にドキドキです。

 

Movie - 「波紋」@TOHOシネマズ日本橋 (2023_mv_#017)



更年期主婦の止まった時間が動き出す

 週刊誌の映画批評を読んで、さっそく地元の映画館で観てきました。

 主人公は更年期の主婦 須藤依子(筒井真理子さん)。「緑命会」という信仰宗教の敬虔な信者で、自宅庭の枯山水を毎朝一人で手入れしています。パート先のスーパーでモンスター・クレイマーの客(柄本明さん)にイライラしながらも、信者たちと祈り、緑命水を飲んで、心を落ち着かせる日々でした。

 2011年に突如失踪した夫 修 (光石研さん)が、癌を発症して自宅に戻ってきたことから、依子の静かな日々に亀裂が生じます。癌治療薬が保険適用されないため高額な医療費を出して欲しいとすがる夫。自分の父親の介護を押し付けて失踪した夫を依子は許しません。そして一人息子の拓哉(磯村勇斗さん)が勤務地 九州から連れてきたのは6歳年上の障害ある彼女(津田絵里奈さん)。

 それでなくても更年期のホットフラッシュ、モンスタークレイマーに悩まされている依子のイライラは募るばかり。そんな依子に、スーパーのパート仲間で清掃担当、人生の先輩 水木(木野花さん)がスイミングを勧め、市民プールで泳ぎ始めます。そんな二人の間に友情とも言えるような関係性が構築され、2011年の震災以来止まっていた依子の時間、水木さんの時間が、じわりじわりと戻ってきます。

 依子と水木さんの中高年シスター・フッド、「緑命会」の信徒たち(キムラ緑子さん、江口のり子さん、平岩紙さんたち)、登場する女性はかなりヤバい人たちで、拓哉の彼女もヤバめです。

 自転車を立ち漕ぎする依子の姿、クラップ音にあふれる劇中音楽・・・全てはラストシーンに繋がりました。大いに笑って、元気さえ貰えた映画でしたが、中高年男性にはどう映ったか、ちょっと聞いてみたいです。 監督・脚本、荻上直子作品。

書籍 - よしながふみ 著 「大奥 10, 11」(2023_bk_#087, #088)

大奥 10 (ジェッツコミックス)
よしながふみ
白泉社
2014-08-28



大奥 11 (ジェッツコミックス)
よしながふみ
白泉社
2015-06-15



家斉、130年ぶりの男性将軍登場

 今年のGWにどんどん読み進める!と宣言したものの、この骨太な作品は1話読み終えるたびに、「うーむ」と考えさせられ、活字の小説以上に脳が痺れます。改めて、すごいエネルギーの作品だと思いました。ドラマのシーズン2が始まるまでに読了したいという思いとじっくりしっかり向き合いたいという思いが、私の中でせめぎあっています。

 第10巻は田沼意次親子の落日、大奥における田沼派の粛清が描かれています。圧倒的に魅力的なキャラクター 平賀源内や長崎から大奥に招聘された医師 青沼も政敵 一橋家 徳川治済(はるさだ)、松平定信(ともに8代吉宗の孫)によって謀殺、斬首され、異学の禁令とともに、源内や青沼たちが命がけで取り組んだ赤面疱瘡撲滅の抗体接種も途絶えてしまいます。

 治済の子 家斉は、幼い頃、青沼によって赤面疱瘡の免疫が接種され、一生、赤面疱瘡にかかることのない健康体として生きることが叶います。その結果、母 治済が巡らした謀略により130年ぶりに男子将軍の座に就くことに。しかし、家斉に求められるのは、徳川家の子孫を一人でも多く残すことであり、政治の表向きは、母 治済が大御所として取り仕切ります。それは、8代将軍 吉宗に倣うモデルではありましたが、二人の大きな違いは治済に為政のための思想、治世観が全くないこと。邪魔な者は、親であろうが、姉妹であろうが、子であろうが、孫であろうが、家臣であろうが、陥れ、命を奪うことに全く躊躇はありません。

 一方、青沼に育てられた医師たちは、大奥を追放されたのち、在野で薬学、西洋医学を実践しながら、臨床医療を続けます。10代将軍 家治や田沼親子の庇護のもと、師である青沼や源内によって切り拓かれた伝染病撲滅のための研究も地道に継続しています。

 自我とともに為政者としての自覚を持ち始めた家斉が、かつて大奥から追放された在野の医師たちに、復帰を乞い願うところで11巻は終了しました。

 10巻にはウィルス性感染とワクチンついて、詳細な解説がなされています。10巻・11巻が発行されたのは、新型コロナウィルスが世界を覆い尽くす5−6年前のこと。今だからこそ、この作品は、私たちに強い力で訴えてきます。

<参考>
第8巻 & 第9巻の感想文はこちらです♫

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